広がる倒れたコップの水 - 三好町の家







広がる倒れたコップの水 - 三好町の家


ある住宅の一角に、もうやめてしまった古い店舗スペースがあった。

その部分をセカンドリビングに改修し、奥の既存住宅から生活が新たに拡張されるという計画だった。

店舗部の床は古いタイル敷きで外部と同レベル

ファサードは天井から地面までのガラス張りで店舗用の出入口がついていた。

それに対して、既存住宅部は床レベルが200mm上がっていた。

倒れたコップの水が大きな机の上を広がって行き、やがて自然なかたちになって止まるような

でも丸くなった水の端部を見ると表面張力でなんとか静止しているだけでまた動き出しそうな

そういう広がり方で生活の拡張を考えたいと思った。

奥の既存住宅から "こぼれて広がってきた" 新設床の終端部は

ガラスサッシに届く前に自ら止まった水のようにした。

"また動き出しそうな" 膨らんだ鉄細工のスクリーンは、残された土間と新しい空間とをやわらかく仕切っている。

そうしてできた不思議な形に残された土間が庭のようでもあり

古い床が刻んできた時間もより魅力的に感じられるのではないかと考えた。

今までのものを壊して新しく生まれ変わってしまうのではなく

しようがなく残ってしまったわけでもなく

どうやって何もしない部分がつくれるかを考えている。

つくらないこと自体が、つくることになっている場合もある。

これまで流れた時間と情報の蓄積がたしかにそこにあり

それを壊さないで前に進めることができたなら

状況を "成長" させることができたと考えてもよいのではないかと思っている。