cage house in shishizuka
cage house in shishizuka
愛知県の郊外にある夫婦と子供一人の為の住宅。
敷地の奥にはおじさんの家が建ち、敷地の西側にはお父さんお母さんの住む家が、計画地には倉庫が建っていた。
その倉庫を解体したのちに、新居を建てる計画である。
敷地の東には、私道が通っており、やや暗いがローカルで親密な公共空間という感じであった。
私道の先には、小さな畑が住宅の庭のようにある。
このような1~2m程度の幅員の私道がこのあたりには、ちらほら見られる。
農地だった時代のあぜ道が、アスファルトに舗装されて残っているとの事らしい。
また、前面道路に沿ってボックスカルバートの水路が通っており
その水路沿いに数百メートルいくと大きく広がる田んぼへと繋がる。
西から東に向かう緩やかな勾配を水路から感じる事が出来る。
新建材を使った戸建て住宅による宅地化と更新がだんだんと進み
平準化していく町並みの中にも、私道や水路から町のストラクチャーをなんとなく感じる事が出来る。
この住宅では、敷地内に建つ親族の家との関係性を考えると共に、周辺に広がる町の雰囲気を感じられるようなあり方を考えた。
なるべくシンプルに構成したかごのような構造体を、町と敷地との境界をあいまいにするように配置している。
かごの隙間を通り抜けた外の景色とインテリアがバラバラと並列され
敷地の中においても道路においても室内においても、建物を通して町の断片を感じられるような存在になればと考えた。
具体的には、6.4m×5.9m程度の矩形平面を、撤去した擁壁と倉庫をなぞるように私道沿いに配置して
もともと私道で感じられたスケール感を壊さないようにしながら
庭と私道が連続するように、道状のコンクリート犬走りを建物に沿って廻している。
前面道路からは、母屋2件へアプローチする為のタイル舗装がそれぞれになされていた事もあり
それらに応答するような作りにもなっている。
また、コンクリート犬走りは、道路と庭のレベルが連続するように調整している為、建物四周でレベルが緩やかに変化する。
外壁モルタル仕上げも地盤に対して外壁が負けて、レベル差を拾うように仕上げている。
4面全ての立面が見える配置計画において、面によって微妙な差異を作り、キューブ的印象を薄めている。
高さの計画は、東側隣家の平屋と西側のお父さんお母さんの2階建て母屋との中間ぐらいとし
田んぼに向かって緩やかに下っていく地盤面を考慮し、突出しないようにと考えた。
2階床のレベルは、周辺の建物の2階床よりやや持ち上げている。
それにより、周辺に広がる住宅の瓦屋根、その間にぽつぽつと存在する畑
古くから残る古墳(獅子塚古墳)や神社、遠くに広がる田園風景を眺める事が出来る。
構造体の隙間から見るそれらの風景は、客観的なものへと抽象化され
町のストラクチャーを実感する事ができる。
1階は、天井の高い明るい空間となり、親族が集まるような場となればと考えた。
1階から眺める母屋の障子や瓦は、2階から眺める風景と少し違い、具体的で親密なものとなっているように思う。
かごのような軸組を作る為に、柱は通し柱とし、間柱を省略するような構造としている。
通し柱に対して、2階床梁と外周胴差しが取り合っているが
胴差しは床の仕上げから独立させ、床が外周の軸組に引っかかったような表現としている。
開口部は、柱の裏にサッシ枠や召し合わせ部分を隠し
風景と構造体がダイレクトに並ぶように納めている。
倉庫がなくなり、そこに現れた住宅での生活が始まる。
生活と風景が住宅をすりぬけていくほどに、町と住宅の境界は混ざっていき
町が広がったような、敷地が広がったような環境へと変わっていく。