連棟の家








連棟の家


個人が営む美容院とその家族の住宅で、さらにバス停を取り込み、通り抜け散歩道を設える計画。

外部空間と内部が同じようなスケール・密度感で反復するような2~4畳半の小さな26の棟の連なりとし、

周囲の2〜3重に建て込む旗竿敷地への圧迫感を低減しながら干渉帯となるような外部を多く作った。

小さな26の棟は近隣旗竿住宅地の密度感を和らげ空地環境を提供し、

対角線上に横断する散歩道は近道を作りながら広大な田んぼの景色と繋げ、

圧倒的に小さい26の建築群に対して大きな樹々は周囲の都市スケールと拮抗する。

独立した棟を並べていく「連棟」形式の特徴は断面図に現れる。

ある断面では庭と内部空間が同じようなスケールで反復する分棟として建ち現れながら、

ある断面では長いワンルームとして建ち現れる。

連続した内部空間でありながら、スケールの似た内部と外部の反復と反転が起きることによって、

ヴォリュームや面積を超えた広がりを感じる空間体験に繋がるのではないかと思っている。

構造は、在来軸組み工法で全ての四隅柱を90角とし小さな空間スケールに対応したメンバーにした。

26の棟を8つの群としてとらえて、各群内・群と群の補完関係を確認し耐力壁を配置している。

たとえば、ダイニング棟は耐力壁がなく開口部のみでつくられているが、

水平力は隣接するキッチンや子供部屋に伝達されており、

連棟形式によって強い棟と弱い棟が寄せ集まることでみんなで支え合うような相互補完関係が成立している。

敷地には毎日バスが停車して待っているお客さんを乗せ、美容院には1時間ごとに違ったお客さんがやってくる。

近くの実家に住む建主のおじいちゃんは樹木に水をあげにくるようになった。

隣接する旗竿住宅のひとつがピアノ教室を営んでおり子供たちが敷地の脇を木々を見ながら通り抜けていく。

都市の粗密の間にできたスポンジのようなポーラスな極小環境が、周囲のさまざまな環境を吸い込み、

ここで営まれる小さな生活と混ざっていく。