ゾーニングする山
ゾーニングする山
富山県富山市に建つオフィスとサロン、オフィススタッフが共有で使用する住宅の3棟の計画。
富山県は、3方を北アルプスや立山連峰など3,000m級の山岳地帯に囲まれる。
山々はきれいな雪解け水を麓に運び、その麓は深い湾を抱くように平野が広がる美しい自然環境に恵まれ、変化に富んだ四季が感じられる。
黒部ダムのある立山連峰は、富山県を象徴する景観であり、その壮大さはこの地の人びとの拠り所になっている。
敷地周辺は、今では宅地化されているが、かつては水田で、その名残としての水路が町のいたるところにある。
敷地の西側にも水路が走り、南側にはその水路から水を引く田んぼが広がる。
北側前面道路の向かいは高木のある公園で、子供たちの遊び場になっている。
各辺に異なる環境をもつ敷地で3つの異なる用途をもつ建築を建てるにあたり、盛り土によって「山」を造成し、
その山によって敷地を3つに分け、山の稜線によって3つの異なる環境を計画した。
3棟はそれぞれひとつ(サロン棟)、ふたつ(ハウス棟)、3つ(オフィス棟)のヴォリュームの連棟形式となっている。
6つのヴォリュームはそれぞれGL±0mm、GL+1,000mm、GL+2,000mmの地盤高さに建つ。
オフィススタッフが使うリビングと執務室、ワークスペース、不特定多数も集まれるサロンは同じレベルに建て、
山のコンタラインに沿ってレベル差のない水平方向の移動を可能にしている。
山に面した窓からは、周辺環境から自生した草花や生物を見ることができる。
山は、ひとつの敷地を3つの区画に柔らかく分けるだけでなく、地域の景観として、また、東側に連なる標高3,000mの立山連峰を望む展望台としても機能している。
立山連峰は、町のいたるところから望むことができる。
敷地の前面道路からも見えるが、敷地内に入ると、東側隣地に建つ倉庫によって、その視線は遮られていた。
そこで山は、隣地倉庫の屋根を超えて立山連峰を眺めることができるように、高さ5mとした。
この山も立山連峰のように、人びとの日常的な故郷の風景の一部となっていくことを目指した。