一宮聖光教会 聖堂・コモンハウス・コモンテラス










一宮聖光教会 聖堂・コモンハウス・コモンテラス


歴史、周辺環境、建て替えの理由

愛知県一宮市、幼稚園が併設された教会(聖堂・コモンハウス)の建て替え計画。

この教会の歴史は古く、1891年にカナダ聖公会の伝道により下馬町(現在の本町4丁目)に講義所を開設、

その後1910年に朝日町(現在の本町通り8丁目)に聖堂を建立し一宮聖公会となり、1941年に一宮聖光教会となった。

その間に聖光幼稚園が開設され、1960年に幼稚園、1962年に聖堂が現在の古金町に新築された。

当時は南側の道路は川で浸水被害もあったことから、北側の旗竿敷地の道路をアプローチとし、ろうそく基礎で木造の建物を1.8m持ち上げた形式であった。

その後、南側の河川は暗渠化し、幼稚園は南側をアプローチとして計画したため、

幼稚園との視覚的な繋がりは薄く、街の道路からの視認性もない状況であった。

また、近年災害が多発する中で、教会が旧耐震の建物であったことから、

現行法規に適合する教会にしたいという意見が強まり建て替え計画を進めることになった。


対話と提案

対話から、見えてきた要望は2点ある。

1点目は、聖堂やコモンハウスへの視認性を高め、人びとが接続しやすい空間をつくること。

2点目は、現在の耐震基準の建物とし、敷地は0.5mの浸水地域であるためエントランスを高くし、かつ段差なくアプローチできる場所をつくることだった。

そこで、1点目の要望の建物配置として、幼稚園とコモンハウスと聖堂の間に、

コモンテラス(鐘の鳴るテラス)と軒下の路地(屋根と柱と煉瓦の道)を建物の間の空間からつくり出した。

冬は日のあたるテラスで、夏は軒下の路地が、劇場で言えばホワイエのような空間となり、

環境に合わせて出来事が敷地全体に展開していくことを目指している。

2点目の要望に対しては、合掌梁とコンクリート柱により、聖堂を地震・水害に強い建物とした。

段差については、コモンテラスと軒下の路地がレベル差を解消し、誰でもアプローチしやすい計画とした。


地域の開かれた教会として

教会では園児から年配の方までお祈りをしている。

特に、この2年間は世界的なパンデミックの中で、人びとの拠り所は失われつつある。

以前、朝日町に聖堂が建てられた時に、教会へ周辺の住民の方が、提灯を寄贈しお祝いしてくれたそうだ。

古金町の住宅地の中にあるこの空間も、多くの信徒の方、周辺の住民に支えられ、

街に美しい音色を響かせながら、コモンテラスを中心に生きた空間、地域の教会、拠り所として存在していく。