中庭を囲む増築棟










中庭を囲む増築棟


中庭が世代を繋ぐ3連棟の家

愛知県岡崎市にある住宅の増築。

建主は、家系が代々住み継いでいる環境を自分の代で終わらせたくないという思いから、両親と祖母の住む母屋の土地に新住棟を増築して住み継ぐ選択をした。

設計中にお子さんも誕生している。これで祖母・両親・夫婦・子供の4世代が同じ土地の中に住んでいることになった。

敷地の記録を遡ると、既存母屋は昭和40年台から3度の増改築を繰り返しながら住み継いでおり、

代々住み継ぐことで複数の年代の建物が寄り集まって現在の環境ができあがっている。

増築することで敷地内に落としてしまう日影を最小とし、かつ眺望や開放性を確保する案を検討した結果、

シアタールーム棟・ダイニング棟・リビング棟といった平面的な3連棟を敷地西側に建て、母屋側からマンション側に近づくにつれて階数や高さが高くなるような案となった。

増築棟を3棟の連棟形式としたのは、増築を重ねている母屋の歪なかたちと親和性をもたせ、棟の隙間に小さな庭ができるようにしたためだ。

その隙間に、1階では既存のミカンの木を切らず、そこを小さな庭として残し、2階では中庭側やミカンの木に面するバルコニー、

3階では周辺建物を超えた風景を望むことができるインナーバルコニーなど、高さごとに異なる外部を計画した。

既存の母屋・祖母棟・駐車場棟に加えて、新築する増築棟を含めたすべての建物で、敷地中央の余白を大きく囲い取るように増築棟の配置を決めた。

その中央広場が全棟で囲む「中庭」となり、ここに住む多世代が顔を合わせる共有の場となるようにした。

割れた皿の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復方法を「金継ぎ」という。

修理したありのままを受け入れ、修復跡を金などで仕上げることで、ただの修復ではなく新たな芸術的価値を生むまでに昇華するものだ。

この中庭が、大きな余白として建築群を結ぶだけでなく、未来にわたって多くの世代を繋ぎ合わせ、

時代ごとに使い方を変えながら世代を結びつける「金継ぎの漆」となることを願っている。